第十三回
「子どもたちと舞台鑑賞」
あそびあーと☆こども劇場いるま事務局長 野田 あさ子
私の住んでいる入間市は、埼玉県西部に位置する人口15万人の小さな町です。小学校は16校、中学校は11校。
毎年学校公演を行っているのは小学校では3校。中学校ではありません。
文化施設は市内に3つありますが、「演劇」というジャンルにだけ絞ってしまうと、企画自体が数少ないのと、
ターゲットはおとなに向けているものが多く、子どもたちがおもしろそうだな、行ってみたいなと思う企画はほとんどないといっていいかもしれません。
私の所属する入間おやこ劇場では、年に4回年齢に合わせた舞台鑑賞を行っています。
高学年以上の子どもたち向けにも4回の観劇のチャンスがあります。
しかし中学生になると、主には部活動の忙しさから舞台鑑賞に足を運ぶ子どもたちは極端に減ります。
そんな実態を踏まえると、入間市内の、特に中学生、高校生で演劇に出会っている子どもは、ほんの一握り、
いえ、一握りにも満たないほんのわずかな、限定されたこどもたちであることは間違いありません。
では映画はどうかというと、市内には映画館があります。
演劇と違い、1日に何回もの上映があり、作品も定期的に入れ替わるわけですから、
「観る」行為自体のハードルは低く、話題の作品には中学生、高校生も多く出かけます。
おそらく、市内の文化会館に行ったことはなくても映画館に行ったことのある子どもたちの割合はとても高いと思います。
映画と同じようにはならなくても、せめてもう少し子どもたちが演劇に出会える機会は作れないのか・・・と考えます。
そこがクリアできる一つの方法として「学校での公演」があげられます。
良くも悪くも授業の一環として観る環境があれば、誰もが一度は演劇に出会うことができます。
うまくいけば中学と高校で6回。すべてが演劇である必要もなく、音楽や伝統芸能もあり、とにかくいろんなジャンルの舞台芸術、
ライブに触れる機会があること。それが大事なのだと思います。学校は評価されたり、競争するばかりでなく、
みんなで楽しむ、心躍る体験の場があって初めて学習も生きていくはずです。
鑑賞は質も量も大事です。いろんな場で、いろんな作品に出会うことでその人自身の感性は磨かれます。
理想的なのは、学校で観ることもできて、それ以外にも自分の意志で観たいものをみられる環境があること。
入間市内の学校に公演をするよう働きかけていくことも、劇場としてどうできるのか考えなければと思います。
昨年12月青年劇場の「キュリー×キュリー」に取り組みました。
一般の方にも観ていただく機会としたのですが、市内の中学校の成人教育講座に取り上げてもらい、
保護者だけでなく子ども達の参加にもつながりましたし、校長先生にも参加していただけたので、今後に手ごたえを感じました。
地域に鑑賞の機会を作り続けることで、舞台鑑賞を楽しむ人の裾野を広げるチャンスにする。それが私たちにできる取り組みのひとつだと考えています。
(2013年2月)
※執筆者の冒頭の肩書は、当時のままになっています。
現在の肩書が分かる方は、文章末尾に表記しています。