ひろば

文化の創造・享受は生まれながらの権利!

福島明夫(劇団代表・日本芸能実演家団体協議会常務理事)



 昨年六月に「文化芸術振興基本法」が、制定以来十六年ぶりに全会派一致で改正され、「文化芸術基本法」と改称されました。この改正は、文化芸術をその本来持つ価値に加えて、社会の中で果たす役割、価値について言及したことにその特徴があります。まちづくり、観光、国際交流などであり、従来国土交通省、総務省、経済産業省、外務省などの省庁で個別に行われていた施策を、政府に文化芸術推進会議を設け、連絡調整を行いながら進めるとしています。

「オールライト」稲沢公演(2017年12月21日)の
ロビーの様子
 この法律の施行を受けて、文化審議会で基本計画の策定の審議が始まり、年内に草案、年度内に閣議決定というスケジュールが発表されています。各ジャンルごとにワーキンググループを作って論議を進め、さらに芸術文化団体からのヒアリングを行い、素案が作られつつあります。そこでは四つの基本目標を掲げ、それに向かう六つの戦略が示されてもいます。そこには「文化芸術の創造・発展・継承と豊かな文化芸術教育の充実」(戦略1)を中心に、その本質的な価値を高めるために「多様で高い能力を有する専門的人材の確保・育成」(戦略5)「地域の文化芸術を推進するプラットフォームの形成」(戦略6)など芸術団体が要望してきたことの反映もあります。と同時に、その社会的・経済的価値を高めるということでは「文化芸術に対する効果的な投資と文化芸術によるイノベーションの実現」(戦略2)や「国際文化交流・協力の推進と文化芸術を通じた相互理解・国家ブランディングへの貢献」(戦略3)「多様な価値観の形成と包摂的環境の推進による社会的価値の醸成」(戦略4)が並びます。私たちとしては、演劇、音楽などの実演芸術に対する支援がなぜ必要なのか、という理由付けとして評価できるとしても、「国家ブランディングや経済・産業振興に役立つ芸術文化に効果的な投資をする」ことだけに重点がおかれてしまう危険性が気にかかるところです。この法律では「文化の創造・享受が人々の生まれながらの権利である」という文化権の規定もされています。その実現に向けての計画づくりという視点を見失わないように、私たちとしての働きかけを行なっていきたいと思います。