優れた演劇を青少年に!

「博士の愛した数式」ワークショップ

ひとときの出会いから

船津 基(俳優)



 「博士の愛した数式」は11月に文化庁主催の「文化芸術による子供の育成事業」で関東の小・中学校で公演します。この公演は生徒達も一緒に舞台に上がるという企画で、その準備もふくめ事前のワークショップが6月から始まりました。 ワークショップを通して、演劇ってどんな物?何が大切?という事を生徒たちと一緒に講師陣も駆け回りながら楽しく実感しています。

 ワークショップ当日、生徒たちが体育館に入ってくるのを待っていると、渡り廊下の方から話し声、笑い声と足音が聞こえてきます。そして体育館に足を一歩踏み入れた生徒たちは一瞬で顔つきが硬くなります。「何やるの?」という表情。同時にこちらにも少なからず緊張が走ります。私はこの瞬間が好きです。ここからわずか1時間の中で少しずつお互いを探り合います。生徒に親しみを持ってもらうため、講師六人はニックネームで呼んでもらいます。私は「ふなっちゃん」。最初は固まっていた生徒たちが始まって10分もすると「フナッチャーン」と寄ってきてくれてホッとします。

 小学校、中学校それぞれの学年や人数に合わせて内容を変えていきます。友達とのスキンシップをはかる目的の物、季節をテーマにして体を使ってのパフォーマンスなどなど。エアー縄跳び(縄を持たずに縄跳びする)を小学校でやった時、一人でやってみると両手がばらばらに動いてしまい、中々難しい事に生徒たちは気が付きます。でも大勢で長縄跳びをやってみると実に楽しそうに、まるで縄があるかのように友達と気持ちを一つに跳びはねます。長い人生の中のほんの1時間ですが大切な瞬間であってほしいと思います。生徒にとっても、講師陣にとっても。