作=篠原久美子
演出=高瀬久男
製作=福島明夫
美術=上田淳子/照明=河崎浩/音楽=川崎絵都夫/音響効果=石井隆/衣裳=宮本宣子/舞台監督=荒宏哉/演出助手=荒川貴代/舞台監督助手=青木幹友/製作助手=大屋寿朗・川田結子



「ハインリヒ、お兄ちゃんが連れていってあげるよ。
ハインリヒが大きくなったら、お兄ちゃんと一緒に月に行こう、ね。」
幼い日の弟との約束−。
やがて大学へ進んだ彼は師・メストリンと出会う。
「科学技術の発達が地球を狭くする。 国境をなくして、貧乏をなくすために助け合える時代がもうすぐやってくる。 そのために天文学が必要なんだ!」
ヨハネス・ケプラーは決意する。
あこがれの宇宙の真実を知るために、愛する家族を守るために・・・。



新進気鋭の作家、篠原久美子 +今注目の演出家、高瀬久男(文学座) +青年劇場の若いエネルギーを結集して挑む新境地!
1999年文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作受賞作。


ヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler) 1571.12.27〜1630.11.15
 ドイツの天文学者。チュービンゲン大学で神学を志すがコペルニクス の地動説に傾倒。数学教師をつとめるかたわら、惑星軌道の数と大きさと運動の調和を研究し、「惑星公転の三法則」いわゆる ケプラーの三法則を導き、近代天文学の祖となる。これにより、太陽系構造が明らかにされ、また、のちにニュートンが万有引力を 発見する基礎となった。
 宗教的迫害と闘いながら各地を転々としなければならなかった彼の生涯は、貧困と不幸に満ちたものであった。1630年没。著書に 『ケプラーの夢』『宇宙の神秘』『新天文学』『世界の調和(和声学)』などがある。


篠原久美子 (作者)
 今回、大変光栄なことに、青年劇場さんの2月公演で取り上げて下さいました『ケプラーあこがれの星海航路』は、 私の作品群の中でも、特に思い入れのある作品です。

 なにしろ、私がケプラーに初めて出会ったのは、高校生の時なのですから。

 その頃私は、科学関係の本を読むのが大好きでした。別に、理数系が得意というわけではなかったのですが、科学者という、 超ロマンチストな人々が、面白くて仕方がなかったのです。だって、彼らは、「空が飛びたい」と思えば、『よし、飛ぼう』って、 飛行機を作ることを考えちゃうし、『月が綺麗だ』と思えば「よし、行こう」って、ロケットを作り始めちゃうんですよ。 空を飛ぶ物語を書いても、そのどこかに必ず墜落のイメージを入れることを忘れなかったり、月を愛でる詩は詠んでも、人間が そこに行けるとは思っていない文学者達が、案外、現実主義者なのに比べると、もう、ぶっ飛んだロマンチストなんですよ。そして、 そのぶっ飛んだロマンチスト達の中でも、最もぶっ飛んだ、最も純粋なロマンチストが、私にとっては、ヨハネス・ケプラーだった のです。

 高校三年生の夏休みに、受験勉強もせずに、「科学入門」なんて本を読んでいたのですが、その本の中に、ケプラーの「宇宙の シンフォニー」の話が載っていました。彼は、「宇宙はシンフォニーを奏でている」と言い、その楽譜を書くために、惑星の軌道 や速度などの、ものすごく面倒くさい計算をやったという記述を読んで、私はめまいがしそうになりました。そしてこの、超ド級の ロマンチストに興味を持ったのです。とはいえ、その当時、ケプラーの伝記は日本で一冊しか出版されていず、その一冊が絶版に なっているということで、パソコンのない時代の高校生だった私は、諦めるしかありませんでした。

 その、諦めかけていたケプラーに再会したのは、私が二十六歳の時でした。古びた県立図書館の本棚に、彼の伝記を、偶然見つけた ときは、息が止まりそうになりました。早速借りて、夢中で読み、そして、読み終わったときには、私のケプラーに対する「興味」は、 「憧れ」に変わっていました。

 この時から、ケプラーは、私の中に住み始めました。彼の「宇宙のシンフォニー」を考え出す、純粋な美しいロマンチストさと、 彼の現実の、あまりにもむちゃくちゃな家族構成のアンバランスさが、驚きを超えて、感動になってしまったのです。なにしろ、彼の 家族は、ならず者で詐欺師の父親に始まり、魔女裁判にかけられるほどご近所に嫌われた母、暴力を振るう元市長の祖父、嫁いびりの 祖母、出戻りの叔母、酔っ払いの叔父と、悲劇のてんこ盛りのような家族なのです。例えば、家族に一人、暴力的な父がいる、というのは 悲劇だけれど、てんこ盛りの悲劇は喜劇になるのではないかと、私はそう思ったのです。

 ケプラーを取り巻く、喜劇的に悲惨な現実と、彼の理論のスケールの大きな純粋さ。それを、現代社会と、現代の科学の抱えている 問題に透かして、科学者のようにスケールが大きく、科学者のように滑稽で、緻密で、大胆で、冷静で、純粋な、そんな舞台を作って みたいと思ったのです。なによりも、私の中で、すでに恋人のように愛しい存在になってしまった、ヨハネス・ケプラーという人間の ことを、書かずにはいられなかったのです。

 その作品が、幸いにも、文化庁の舞台芸術創作奨励賞の佳作に選出され、また、本当に嬉しいことに、文学座の高瀬久男さんという 優れた演出家の演出で、青年劇場さんという、誠実な舞台作りに定評と実績のある劇団さんの制作で、舞台になることとなりました。

 科学に興味のある方も、また、そうでない方にも、ぜひ、ご覧頂きたいと思います。

 科学は、人を傷つけるために発達したかったのではありません。真実を見つめ続けた、「超ロマンチストな科学者の、美しい夢」 を観にいらしてください。

 劇場でお会いできますことを、楽しみにしております。



ケプラーの師・メストリン教授 に聞いた
ケプラーに接近する
「7つの扉」
の扉
「時代」
すでに地球は丸かった
の扉
「家族」
ややこしい家族
の扉
「経済」
お財布とプライド
☆☆☆そして「地球」
生命の惑星
の扉
「宗教」
天国への優待券
の扉
「戦争」
宗教を利用し、
科学を食い物に
の扉
「宇宙」
自己チュウとの決別
の扉
「科学」
偉大なる思い込み


劇評より
 抱腹絶倒とあるだけに笑いに満ちた舞台。しかし前半のテンポの速いこと。観客が道筋に納得いくまで、つまり人間関係を 頭に入れるまであまりに観客を 放り出して展開するから、慣れの時間が必要だ。自分について篠原は、発想がユニーク、大胆、ハチャメチャ、力業と自己評を下しておられるようだが、 なんのこの中世期の世界を天文の学問とそれに絡んで複雑な宗教の行方をよくぞまあ描き切って見事な戯曲に組み上げてみせた。篠原の才を買う。
「テアトロ」4月号より抜粋・佐藤康平氏


2005年公演班だより


2006年全国公演
6月 石川県高文連文化教室・近畿
10月〜12月 山形高校演劇教室
本物の舞台芸術体験事業(公立文化施設)
中国・九州・沖縄
詳しい日程は →こちら


この作品は、全国の高等学校・中学校の演劇鑑賞教室や子ども劇場・おやこ劇場の例会などでの上演が可能です。青少年のための公演を企画されている方はぜひお問い合わせください。

TEL03−3352−6990 青少年劇場部