雲ヲ掴ム

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 青年劇場は2016年を、「舞台を通して私たちの取り巻く世界を考える」と題し、いま上演するにふさわしい作品を揃えて臨みます。その第一弾が、気鋭の劇作家・中津留章仁氏とタッグを組んだ書き下ろし『雲ヲ掴ム』です。

 今回キーとなるのは、武器輸出≠ニ防衛装備=B2014年に「防衛装備移転三原則」閣議決定によって武器輸出を原則容認した政府は、着々と武器の売り込みを始めています。昨年の安保法制の強行採決をはじめとする一連の動きから、日本がどこに向かって舵を切ろうとしているのか、未来はどうなっていくのか、思いを巡らす方も多いのではないでしょうか。

 一方で、規制緩和によるさまざまな労働問題や事件が相次ぎ、生活保護の受給者は過去最大、少なくない人々が生活の問題を抱え、経済に不安を感じています。そして「経済効果」「経済成長」という謳い文句が巷を跋扈し、果てなき経済至上主義はついに武器≠ワでも、ビジネスモデルとして公然と語らせるようになったのです。

 このことは私たちの日常を、そして意識を、どう変質させるのでしょうか。

 今回の作品は、戦車の部品を製造している町工場を舞台に、それを経営する家族の物語です。卓越した技術を持つ熟練工がおり、大企業からも一目置かれていながら、不況による経営不振は長く続き、技術継承はされないまま…。ある日、防衛装備庁の役人と国会議員らがやってきて、戦車の海外市場への進出を理由に、受注増大の話が持ちかけられます―。

 技術の向上と継承、経営の立て直し、人を殺すかもしれない武器の部品を造ることへのためらいで彼らは揺れ、それぞれの思いが軋み出していきます。中津留氏特有のユーモアとアイロニー漂う会話劇は、どこか可笑しくも哀しい彼らの姿を包み込みながら、現代日本の矛盾と病巣に深く切り込んでいきます。

 演劇は社会を映す鏡であり、人間や社会のありようを追求する芸術でもあります。この作品が、未来へ向けた対話を生み、繋がりあう機会となれば幸いです。

 どうぞ劇場へ足をお運びください。お待ちしています。

秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場



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