新しいキュリー夫人の誕生

 新しいキュリー夫人の誕生 おめでとうございます。私が15年間、東京をふくめて日本国中、青年劇場のみなさんと、キュリー夫人の旅が出来たのは幸せでした。そして、なんといっても、世界で最も知られている、愛に溢れてた物理学者を演じる事が出来たのは、私の人生の中でも大きな出来事でした。あの時代に、女性が物理学者になるなんて、誰も考えていなかったんですし。まして、ロシア圧制下のポーランドから、パリのソルボンヌ大学に来るなんて、です。しかも、貧しく、ろくに食べものもない中でも、自分を信じて、遂に、ラジウム発見まで到達するんですものね。最も、もし夫のピエールに会わなかったら、彼女の人生は、全く違ったものになったでしょう。

 私は、この間、100歳すぎで亡くなった、キュリー夫人の次女と文通していました。世界一すぐれた、といわれる伝記『キュリー夫人伝』を書いた人です。偶然、彼女は、ユニセフの二代目の事務局長の奥さまだったのです。私が舞台の写真をお送りしたら、「母は、こんなに綺麗じゃなかったです。でも、若い母に会えたようで、うれしいです。日本でも、母が知られてるのは感激です。日本のみなさまに、よろしく」というお返事を頂きました。キュリー夫妻は、すべて、世界のみんなのために、特許も取らず、平和を願いました。

 この芝居は喜劇です。どうぞ、みなさま、キュリー夫人、そして、まわりのみなさまに暖かい拍手を、その拍手は、キュリー夫人にも届くことでしょう。ご成功を祈っています。

(くろやなぎてつこ 女優・ユニセフ親善大使)