ものがたり

 パリ物理化学学校の講師ピエール・キュリーは、金儲けにも異性にも目をくれず科学の探求に邁進する純粋な研究者。ストーブ用の石炭も満足に支給されない実験室で、同僚のビクロとともに日夜「お金にならない研究」に明け暮れている。

 しかし校長シュッツの頭にあるのは、科学アカデミーの勲章と、儲けを産む実用的な研究だけ。ある時、業をにやしたシュッツ氏はピエールたちに告げる。「ひとつ、一ヶ月以内にアカデミーに公式発表できる研究成果をあげること。ひとつ、ポーランドから来た若い女子学生を助っ人として迎え入れること」

 黒いドレスに黒の帽子、ひっつめのまげといういかめしい姿で現れたその女性の名は、マリー・スクロドフスカ。科学の研究を続けるため、ロシアに支配された祖国を逃れはるばるパリまでやってきた彼女こそ、のちのマリー・キュリーである。

 おんぼろの実験室に、小さくともけっして消えることのない光が灯る。苦しい研究生活の中、ピエールとマリーは、かけがえのない絆で結ばれていく…。

 金銭的な窮乏、不穏な社会情勢、アカデミー権力者たちの無理解、他の科学者からの厳しい批判を乗り越えて彼らは研究を続け、ついに「放射能」と呼ばれる不思議な性質を持つ金属「ラジウム」を発見する。