<東京公演は終了しました>
第89回公演
ナース・コール
高橋正圀=作 松波喬介=演出
演出助手=白石康之 美術=石井強司 照明=河崎浩 音響効果=菊池弘二 衣裳=宮岡増枝
宣伝美術=山下昌也 舞台監督=青木幹友 製作=大屋寿朗 製作統括=福島明夫



(舞台写真:蔵原輝人)

「笑い」はウイルスを駆逐する!?

人類究極の敵「ウイルス」との戦いに挑む
医療スタッフたちの姿を描く、

ミニSF社会派人情喜劇???


  

ものがたり
 桐原麗(うらら)は、勤務七年目の看護師。いつも元気で、病気らしい病気をしたことがなく、そそっかしくて忘れ物の天才だからいつも廊下を走っている。
 “看護師”と聞くと、ひとは「ま!白衣の天使ね!」と定番の反応。そして、「大変ねえ!」と同情はしてくれるが、「カッコイイ!」とは言ってくれない。それがくやしい。医師も患者も彼女らに甘える、かと思えばエラそうにアゴで使う。後輩にもカッコイイところを見せられず、自分にはむいていないかもしれないとも思う。「なんで私は看護師になったんだろう…?!」うららの自分探しの日々は続く。
 ある日、高熱を発した患者が入院してきた。はじめはインフルエンザと思われたが、検査の結果、未知のウイルスに感染している疑いが…。


  

けっしてカッコよくない、まじめに働く人々に贈る、友情と信頼の応援歌!
 ビタミンとは、「なくてはならないもの」という意味で、ペニシリンは「あってはならないもの」という意味だと聞いたことがある。確かにビタミンの語源は 「生命(Vita)に必要なアミン」であり、抗生物質はAntibioticの邦訳で、直訳すれば「生物(Bio)…のアンチ」である。今では、抗生物質はなくてはならない ものになっているが、本来、人間がウイルスが出現する環境を作らなければ、必要ないはずのものであった。

 こんな枕をふったのも、看護婦さんの仕事は、ビタミン的職業の筆頭に上げられるんじゃないかと思ったからだ。これまで何度となくお世話になり、きつい・ 汚い・危険の3Kをものともせず、患者の再起を幇助する姿には、ひたすら頭の下がる思いをしてきた。

 ところが、今回、看護婦さんの世界を劇化するに当たって取材をするうちに、あまりに世間の評価が低いことに驚いてしまった。 白衣の天使として一目おかれはするが、「大変なお仕事なんでしょう」「偉いわねぇ」の言葉の裏には同情が見え隠れする。「立派な仕事だと思うが、自分の娘には やらせたくない」と、はっきり言われたこともある。わがままな患者は、寝たきりでもないのに「ティッシュ拾って」「売店で××買ってきて」と、小間使い扱い、 威厳丸出しの医師には、下働き扱いでこき使われる。看護婦と聞くと、爪を切ってくれたり、寝たまま髭を剃ってもらえると思ってる勘違い男が多いから結婚もままならない。 スチュワーデスには危険手当が付いているそうだが、常に院内感染の危険に晒されている看護婦にそういう手当はない。それに、スチュワーデスは、依然として 「かっこいい」職業であり、看護婦は「かっこいい」なんて言われたためしもない、どころか職業を隠すことさえあるという。

 何たることか!ちょっぴり義憤を感じた。よし!それじゃ、かっこいい看護婦を描いてみようじゃないか!……義憤がモチーフになって、共通の敵に対して立ち向かう、 仲間たちの友情と信頼の物語が少しずつ育まれていった。

 執筆の間中、世間を騒がせたのがライブドア騒動だ。株を動かすだけで何百億と手に入るというのは、どう考えてもまともじゃない、博打うちの世界である。それが 表舞台にしゃしゃり出て「人の心はお金で買える」などと、臆面もなく強者の論理を振りかざす姿は、弱者の再生に邁進している看護婦さんとは、まぁ何と世界の違うことか。

 でもまぁ、同じ人間と思うから腹が立つんで、抗生物質とウイルスの戦いだと思えば溜飲も下がる。突発したウイルスを抗生物質で叩けば、ウイルスは一時おとなしく なるが抵抗力を付けてまた頭をもたげる、だから更に強力な抗生物質が必要になる……ライブドアとフジテレビの関係もよく似ている。何一つ生み出さない不毛の戦いは、 時代の象徴と言えるかもしれない。しかし、青少年にはかなりの毒だろうなぁ。

 突然スケールが小さくなるけれど、僕らは少ない予算で、感動を分かち合えるような舞台を提供しようと意欲に燃えている。お金が全てじゃない、なんて中学生の教科書の ようなことを言うのはちょっと恥ずかしいが、これほどに拝金主義がのさばる風潮の中では、看護婦さんの世界を描くことはタイムリーだったような気がしないでもない。 ライブドアさん有難う、と言うべきだろうか?

高橋正圀
たかはしまさくに
1943年生まれ。山形県米沢市出身。シナリオ作家協会・シナリオ研究所終了。第20回新人映画シナリオコンクール佳作入選。山田洋次氏に師事。映画・テレビの脚本を数多く執筆し、高い評価を得ている。
2002年、初めての戯曲集「遺産らぷそでぃ」(「愛が聞こえます」「菜の花らぷそでぃ」同時収録)を出版。

《青年劇場での上演作品》
「遺産らぷそでぃ」(1990年)
「キッスだけでいいわ」(1992年)
「愛が聞こえます」(1996年)
「銀色の狂騒曲」(1999年)
「菜の花らぷそでぃ」(2000年)
「キジムナー・キジムナー」
(2003年)


  

出演
(写真にポインターを合わせると役名が表示されます)

青木力弥

北上奈緒

井上昭子

広戸聡

伊藤かおる

寺本佳世

湯本弘美

杉本光弘

大嶋恵子

大木章

奥原義之

崎山直子

福原美佳

榎本葉月

重野恵

秋山亜紀子

高山康宏