【ものがたり】
ところは関東圏の中都市・花里市。
カレー店を開業しようと、3年ぶりに故郷に戻ってきた辰次(32)は驚いた。街の中心部にある「すずらん通り商店街」は店舗が半減し、シャッター通りと化していたのだ。
「こりゃまずい・・・」。実は恋人の萌が一週間後に来ることになっている。この街の様子を見たら逃げ出し、結婚もパーになるかもしれない・・・。と、早くも逃げ腰の辰次。
しかし、商店街の再興に燃える小母さんたちが久々にやってきた若者をみすみす逃がすはずがない。「すずらん通り再生のエース帰還!」と祭り上げ、あれよあれよという間に街の存続をかけたドタバタに巻き込まれていく・・・。
高橋正圀
たかはし・まさくに
山形県米沢市出身。シナリオ作家協会・シナリオ研究所修了。山田洋次氏に師事。映画・テレビの脚本を数多く執筆し、高い評価を得ている。
<青年劇場での上演作品>
「遺産らぷそでぃ」
「キッスだけでいいわ」
「愛が聞こえます」
「銀色の狂騒曲」
「菜の花らぷそでぃ」
「キジムナー・キジムナー」
「ナース・コール」
「結の風らぷそでぃ」
2007年の初演の折、再演は2010年だと聞かされてほとんど絶望的になった。三年も経ったら巨大ショッピングモールががっちりと定着し、個人商店は指で数えるほども残らず、シャッター通りなんて言葉そのものが死語になってしまうんじゃないかと想像したからだ。
ところがどっこい、商店街は健在である。内情は火の車かも知れないが、必死に徳俵で踏ん張っている感がある。逆に巨大ショッピングモールの方に陰りが見えているというんだから、俗に言う「企業とおできはデカくなったら潰れる」を裏書きしているようなものだ。
かといって、商店街の未来が薔薇色かというととんでもない。相変わらず状況は絶望的である。でも、絶望的ではあるが絶望ではないところにかすかな希望を感じ、エールを送り続けようと思っている。
今日も三河屋の若旦那が、店頭で甘酒をふるまっていた。甘く暖かい、ぼくもそんなドラマを届けたいと思っています。