青年劇場創立40周年記念・飯沢匡没後10年記念公演
第87回公演
夜の笑い―第二部「接触」―
島尾敏雄「接触」より
飯沢匡=作 松波喬介=演出 福島明夫=製作


授業中に餡パンをくったら死刑!?
突如としてあなたを不条理の世界につれ込む"飯沢喜劇"
劇団創立40周年、飯沢匡没後10年を記念して今、蘇る!!


不条理を条理で描く「接触」 松波喬介
 『接触』は島尾敏雄の小説を脚色したものです。島尾さんは海軍の特攻「震洋隊」の隊長で、 体当たり自爆訓練で死と向い合う毎日をおくっていました。しかし敗戦となり、この特攻体験が 戦後「脅迫観念」なって「悪夢」に悩まされるのです。『接触』の「授業中に餡パンを食べて 死刑を宣告される」という話もその「悪夢」にほかなりません。

 先のイラク人質事件、「自己責任論」などで海外のメディアから「お上にはたてつかない」とか、 「恥の文化」だとか批判がでました。戦時中は天皇のために死ぬことが「お上のため」の潔い、 名誉なことだったわけで、この風潮は、徳川、明治時代から培われた日本人の国民性といっても いいでしょう。飯沢先生もよく「日本人にはまだ丁髷がのっている」と「儒教思想」から 抜け切れない日本の現状を批判していました。

 さて、この不条理小説をリアリズムで劇化したのが『接触』の舞台です。原作は時代、場所、 事件も夢うつつの世界ですが、戯曲では教師たちも夏目漱石の『坊ちゃん』から「狸」「うらなり」 「のだいこ」「赤シャツ」「山嵐」のキャラクターを巧みに混ぜ込み、権威に諂う無責任な教師像を 創り出しています。また原作では、ただじっと俯いているだけの生徒の妻が、舞台では女副校長の 権威主義と不条理に、明快な条理で反抗する知的でエネルギッシュな平民出の若妻として登場します。 「不条理を条理で描く」飯沢匡のブラック・コメディは、ますます鋭利に今日を照射するでしょう。


1978年に初演し、第13回紀伊國屋演劇賞・団体賞、 第13回東京労演賞、第20回毎日芸術祭賞を受賞。
1980年にはフィレンツェ国際演劇祭に招待され、絶賛を博した青年劇場の代表作。


心の底から笑い、そして涙が…
飯沢先生渾身の作品
黒柳徹子
(俳優)
 飯沢匡先生は、この『夜の笑い』という作品をとっても気に入っていらっしゃりました。 特にフィレンツェの国際演劇祭に招待されて公演できることになった時は、青年劇場が、 あのフィレンツェの十七世紀に建てられたペルゴラ劇場に、日本から唯一選ばれたという事も、 劇団のみんなに「よかったね、よかったね」とおっしゃっていました。東ドイツ(当時)の シューマッハ教授が日本にいらして、随分たくさんの日本の芝居を見て、その中から、 この『夜の笑い』をフィレンツェ国際演劇祭に推薦してくださったという話も、先生を 喜ばせたのです。フィレンツェの公演は大成功だったそうで、先生は、「小竹君は マリア・カラスと同じ楽屋でお化粧したんだよ」と、由緒ある劇場の美しさについても 報告して下さいました。むこうの批評の中に、「日本の墨絵のような作品だ」というのがあって、 このことも、「なんて、よく分かってくれたんだろう」と、ニコニコ顔でした。

 私も、この「アンパン喰ったら死刑!」ということで、本当に死刑になりそうな学生たちが 裸になるところは心配したし、なんといっても小竹伊津子さんの、決めこんだら変えようとしない、 こわい副校長先生が、鳥肌が立つほど恐ろしく、心に迫りました。トットちゃんの学校の校長先生と、 なんと違うことだろう、と、自由であった自分のことをしあわせだとも思いました。 他の、夏目漱石の坊ちゃんと同じ仇名の先生たちの存在も、飯沢先生らしくて、沢山笑ったし、 恐れを知らず、愛のためにチエをしぼる妻役の藤木久美子さんの強さも、拍手ものでした。

 『武器としての笑い』という本で、飯沢先生は、何も力のない民衆は、権力に対抗するにはチエを 使って、笑いで応酬するのだ、と書いていらっしゃる。私たちは本当に、この作品で心の底から笑う。 そして最後に、なぜか涙が出る。これは、飯沢先生の作品に共通してるのだけれど、そしてこれは 優れた喜劇作家が、たいがい持っている詩人としての美しいものが、ドンデン返しのあとに、 しみじみと伝わるのだと思うのです。

 戦時中、軍部に抵抗し、検閲をうまくすり抜けて喜劇を上演させて来た先生。 でもやはり命がけのことだったとは思う。その先生が、渾身の力でお書きになったこの作品が 上演されることを、先生はどこかで、よろこんで見守って下さることと思います。

 心からのご成功を!


時は明治19年。熊本の尋常高等小学校で、授業中に餡パンを食べた5人の生徒たちが、校則違反として死刑を宣告される!


出演者
(ポインターを名前に合わせると役名が表示されます)
スタッフ

小竹伊津子

西沢由郎

森三平太

後藤陽吉

青木力弥
美術松下朗
美術協力高橋あや子
照明山内晴雄
音響効果山本泰敬
音響効果(補)石井隆
衣裳宮岡増枝
演出助手白石康之
舞台監督荒宏哉
舞台監督助手青木幹友
宣伝美術大貫充
製作助手大屋寿朗
川田結子

北上奈緒

藤木久美子

広戸聡

板倉哲

田中慶太

中川為久朗

船津基

高山康宏

斉藤望



9月18日(土)〜28日(火) 新宿南口 紀伊國屋サザンシアター
9月29日(水) 府中の森芸術劇場ふるさとホール
10月1日(金) かめありリリオホール



観劇後のアンケートから

(舞台写真:蔵原輝人)
やはり怖い内容でした。ユーモアの中で進められたので余計そう感じました。今の状況は、まったくこの生徒達の様子と 一致していることが更に怖いと思う要因でした。素晴らしかったです。
(女性・59才)
飯沢先生の喜劇ということでチラシを拝見して興味を持ちました。熊本の出身なのですが、熊本弁が大変によく書かれていて驚きました。祖母が喋っていた 古い言葉づかいも出てきて、とても親しみがわきました。お話もお芝居もとてもおもしろかったです。満足しました。
(女性・33才)
小竹さんのはぎれのいいセリフ、歩き方、朗々と和歌を歌う場面のおかしさ、初演の時の笑いがよみがえりました。 戯曲がこんなに面白かったとは思いませんでした。25年前は不条理なユーモアが楽しめましたが、今観るとなにかリアルな劇に見え不気味に感じました。 いよさんがスーパーマンに思えました。現実にはスーパーマンはいないのですから大変です。
(男性・52才)
あっという間の1時間40分でした。舞台を見るのは好きなのですが、何かと忙しく、足が遠のきがちで、このような すてきな作品に出会えると今日一日がとても良い日になりますし、また他の作品を見てみたいなと思います。
(男性)
実におもしろく、平民の力が描かれていて、気持ちよかった。古くて新しい内容でした。
(未記入)
本当に20年以上も前に初演された脚本なのー?と思いながら観ました。すっごく面白い、そして"今"という時代も、 しっかり切り取られてそこにあり、ぐいぐい引き込まれていった。不条理劇だけれど私達のくらす社会が条理に支配されているかといえば、決してそうではなく、 この芝居で笑うほど自分自身を笑っているようで、笑いながらもチクリと刺されるような、不思議な感覚でした。これからも飯沢作品をみてみたいです!
(女性・31才)
初演を見たときの印象が強く残っています。しかし、今回は当時よりも深く私をとらえました。おそらく別な視点から この劇を見ることができたからと思います。只笑うだけでなく、こみあげるものがあったのです。ありがとうございました。(それにしても飯沢先生はやっぱりスゴイ)
(男性・59才)
教育は今も昔も権力が思うままに動かしていることを、劇をみながら考えました。本来、自由で人を大切にし、 一人一人の考えを大切にするところになりたつのが本当の教育でしょう。この国は不幸です。小竹さん名演。みなさん好演でした。
(男性)
武子先生は、とてもこわいけれど、なぜ武子先生は、あのような方になったのかを考えていました。厳格であらねばならないと、 本人が思い込み、又、周囲(環境)が彼女をあのような人格に作っていったように思いました。着替えを手伝っている時の艶やかな先生が、もし少女時代にもどれるなら、 女性としての武子先生を押し殺すことなく、生きることができたのに・・・と思いました。
(女性・31才)
音響、照明に任せたり、奇をてらったような舞台も多い中、本物の芝居を観たような気がします。
(女性・32才)
私共が演劇を観始めたのが丁度10年位前で、飯沢匡が逝った直後だったような気がします。以来、飯沢匡作品を 1度は観たいと思っていましたので、待ってました!という感じで出かけました。期待に違わず、アクのあるユーモアが笑いの中に不気味で、今という時代を 思わせます。最期の挨拶にもありましたが、こういう過去に上演された作品が益々現在身につまされて来るところが恐ろしいです。こういう作品が「時代遅れ」に なってほしいものですが、これからも飯沢作品が次々上演されることを強く希望します。
(女性・67才)
夫を思う妻の知恵が、権力をかさず力をもくずしてしまった。痛快な内容でした。今の世にも共通のものがいっぱいありますね。 こんなものも、あの妻の様な力で切り捨ててしまいたいもの。
(59才)
大変よかった。だんだん面白くなってくる芝居でした。後から後からしみじみ考えさせられる芝居でした。そして、 かみしめればかみしめるほど怒りがわいてくる芝居でした。そして、こんな世に二度と戻させないためにがんばるしかないことを勇気づけられる芝居でした。
(男性・64才)
久しぶりに胸のすくような舞台を拝見させていただきました。新旧織り交ぜてが成功したと思います。ベテランに伍して 若い人たちががんばりました。それにしても「日本人には和服がよく似合う」当然のことながら再確認いたしました。ますますの御活躍をお祈り申し上げます。
(女性・74才)
時期に叶ったよい芝居でした。演技も細かい所まで、行き届いてすばらしかったです。一場だけで演じ切るというのも、 すごいと思いました。
(女性・61才)
多少、方言を聞き分けるのに苦心しましたが、それをさしひいても充分に楽しめたと思います。それにしても良く出来た 台本だと思います。
(女性・29才)
いや〜!たまがったな〜。こんなすばらしい作品だとは思ってもいなかったので、すっかり泣かされてしまいました。 嫁の真情、賢さに泣かされました。ありがとうございました。皆さんの熱演、お見事でした。かろうて帰っていく姿、忘れられません。大分出身、方言がなつかしかったです。
(男性・75才)
端正な舞台で最後までストーリーにひきつけられた。とてもおもしろかった。島尾敏雄の原作も読みたいと思った。
(女性・64才)
会話にユーモアがあって、とてもおもしろくもありました。どんな時にも、前向きに生きてゆく事が出来るのだなと思いました。 ほのぼのとした夫婦愛に涙も出ました。ありがとうございました。
(女性・53才)
飯沢匡さんのファンで名古屋から是非にと思い来ました。とてもはりつめた舞台で、その上ドッと笑わせ、レベルの高さを 感じました。とても切り込みがよかったです。是非名古屋公演を!
(女性・53才)
期待にたがわぬ面白さ。校則に則って「授業中の飲食は万死に価する」それを杓子定規にとって・・・。これからも青年劇場 がんばらねばなりませんね。
(男性・60才)
お上の声に思考力も奪われてしまう今の国民の姿を思いました。権力がない私達でも、知恵、工夫、勇気で道が開けると、 笑いながら知りました。おもしろかった。
(未記入)
腹の底から笑わされた。そして、「荒唐無稽の話のようでもあるが、なんか今の状況と似てないか」と考えさせられ、 ゾッとした。「チエ」を絞らないと「処刑」されちゃうぞ。 小竹さん、嫁さん・・・全ての役者に敬意。さすが青年劇場!
(男性・57才)