高橋正圀
(たかはしまさくに)

 よくまぁ逆風ばっかり吹いてくれる、今度はTPPと来たもんだ。環太平洋パートナーシップ協定、これは関税や規制を根こそぎ取っ払って、完全な国境なき経済を目指すもので、おそらく農業は壊滅的な打撃を被るだろう。日本は資源のない島国で貿易立国の国と思ってる人は多いが、貿易依存度はたったの17%、GDPに占める割合は世界170国中164番目の低さだ。つまり、日本は貿易の役割がきわめて小さい内需経済が中心の国なのだ。でも、大マスコミはそれをほとんど伝えないだろう。八方塞がりの首相がほざいた「平成の開国」もちゃんちゃらおかしい。だって、TPPにはロシアも中国も、韓国も東アジアの国々だって参加してないんだよ。当然だろうね、アメリカの食糧戦略が見え見えなんだから。なんで日本が参加する必要があるの?

 そんな逆風下で、主人公結(27)は周囲の反対にあいながらも家業の農業を継ぐと宣言した。しかも有機農業をやると言う。その志や壮、しかし有機農業は口で言うほど簡単ではない。案の定一年目はヒエや雑草が生い茂り、結の田んぼは村で一番汚い田んぼに成り果て、有機農業は大失敗に帰した。今年は二年目、勝負の年である。雪辱できるのか、それとも返り討ちにあってしまうのか。結の挑戦が始まった。


1943年生まれ。山形県米沢市出身。
シナリオ作家協会・シナリオ研究所修了。山田洋次氏に師事。
映画・テレビの脚本を数多く執筆。
深刻な社会問題を庶民の目でやさしく語り、人情味溢れる笑いの内に人々を励ます「社会派人情喜劇」の名人。

<主な作品>

【TV】
NHK「まんさくの花」「ひこばえの歌」「はっさい先生」「咲くや花嫁」「のんのんばあとオレ」、TBS「幸福の黄色いハンカチ」、KTV「鬼ユリ校長、走る!」、CX「壁ぎわ税務官」など多数
【映画】
「釣りバカ日誌5」「釣りバカ日誌7」「祝辞」「ホーム・スイートホーム2」他


高橋正圀+青年劇場 農業三部作

「遺産らぷそでぃ」
(1990年〜1997年)

 農民作家・山下惣一氏の著書「ひこばえの唄」を原作に、コメの輸入自由化や「農政」問題をベースに「農」のありかたを問う舞台。高橋氏と青年劇場が初めて出会った作品で、農家の遺産相続問題を笑いと涙の中に描き、全国で300回上演!


「菜の花らぷそでぃ」
(2000年〜2009年)

同じく山下惣一氏の「身土不二の探究」を基に、父と息子の農業のあり方をめぐる対立を軸に展開。次々に明るみに出た食品偽装や輸入食材による問題、さらには派遣切り、リストラなどの問題も加えながら改訂を重ね、足掛け10年に渡って全国で241回上演!


「結の風らぷそでぃ」
(2009年〜)

農業問題三部作の完結編として、「改定農地法」が可決された2009年に初演。60余年前の農地解放から現在に至る農業政策を振り返りながら、食料自給の問題や国際的な食糧問題など、グローバルな問題にも迫り、「農」のありようと人間の生き方を問いかけます。


<その他の高橋正圀作品>

「キッスだけでいいわ」(1992年〜1999年)
「愛が聞こえます」(1996年〜2001年)
「銀色の狂騒曲」(1999年)
「キジムナー・キジムナー」(2003年)
「ナース・コール」(2005年)
「シャッター通り商店街」(2007年〜)
「青ひげ先生の聴診器」(2011年)