第九回
「心の奥底に届いた波動!」
京都市立洛陽工業高等学校教諭 田中 明美
今年の芸術鑑賞会は、5月10日長岡京記念文化会館にて、青年劇場による「修学旅行」を観劇しました。
当日は、急な悪天候にも関わらず、良好の出席状況で鑑賞会を始める事が出来ました。
この行事は、芸術鑑賞を通して教養を身につけ、人として大切なことを感じてもらう為、毎年行っている重要な行事です。
しかしながら、授業時間の確保や予算削減など、今にも無くなってしまうかもしれない行事でもあります。
私自身、この担当をさせて頂くことになり有難さと責任感を感じています。
小学・中学・高校に亘って芸術鑑賞会を経験して育った一人として、生徒たちにも同じようにワクワクとした出会いを楽しんでもらいたいと思っています。
今回の劇は、初めから最後まで旅館の一室で繰り広げられます。
修学旅行先での沖縄の人々の抱える様々な問題と、そこから発展して見えてくる世界情勢を、個性の強い5人の女子生徒の複雑な心境と絡みあわせて描いており、
生徒たちもその面白さにどんどん引き込まれていきました。
幾度となくやってくる波動、目に見えないこのメッセージが創造力を広げた生徒たちの心の奥底に感じ見えてくる。
その瞬間、生徒たちと舞台は共に一つのものとなっていました。
鑑賞会を終えた生徒たちの感想は、とても楽しく観ていたと同時に、多くのメッセージが盛り込まれ、
迫力ある演技から、大変励みとなるパワーを受けた事が記されています。
その反面、初めから最後まで見入ってしまったが、何を言おうとしてるのか?感じ取れないままの生徒もいました。
今すぐに見えてこなかったり良く解らなくても、この先、無限の能力を兼ね備えた生徒たちですから、
創造力と、自らの受信機を育んでいくことで心の奥底に届いた波動は、いつか何かの機会に思い出され、
隠された数々のメッセージがその度ごとに見えてキャッチされていくと思います。その時がとても楽しみでなりません。
本校の生徒も工業高校生として、普段から基本を大切にした物づくりを通して、自分らしく、前向きな気持ちでいろんな開発にチャレンジしています。
芸術も工業も創るものは違いますが一つのものを作り上げるにはたくさんの人の力が必要であるということと、
互いに協力して、相手に対して尊敬の心を持つという事の大切さを強く感じ取ってくれたと思います。
当たり前のことのようですが、自分たちと等身大の舞台を見て実感できたようです。
ここで得られた多くの感動と、貴重なメッセージを忘れないよう大切に、明日へ繋げていきたいと思います。
学校での教育活動は、家庭での教育を基にすべての先生方の協力で成り立っています。
芸術鑑賞もまた、人との関わりの中で、多くの経験をして、一人ひとりが何とか自分の道を見出し育んでいこうとする重要な機会であり、大変意味のある行事だと思います。
このような機会を今後も大切に続けていきたいと思います。
(2011年6月)
※執筆者の冒頭の肩書は、当時のままになっています。
現在の肩書が分かる方は、文章末尾に表記しています。