【あらすじ】
田畑民夫は東京の家電会社で働く営業マン。リストラの嵐が吹き荒れる中、鬱々とした日々を送っている。ある日、突然の父の訃報が飛び込んできた。残された家族は「農地をどうするか」という問題に直面した。
そんな中、「残った農地の処遇にお困りではないですか」と現れたのは農業法人「SKファーム」の片桐さつき。田んぼを代わりに耕してくれるというのだ。
家族が賛同する中、なにかが心にひっかかった民夫は、少々変わりモノで自給自足の生活をし、村人から“みのむし仙人”と呼ばれている島中老人に会いに行く決意をする。
「都市文明に未来はあっとか?あんたが農地を継げばよか」迎えた仙人の答えは明快だった。
果たして民夫の選択は!?
都市は脆弱だ。雪が降れば交通マヒ、米不足といえばパニック。日ごろは偉そうにしているくせに足元が弱い。(まるで私みたい!?)そこへもってきて、異常気象だ、世界的不況だなんだと不安をあおるマスコミ報道…。そんな私に「市民皆農」の筆者山下惣一さんや中島正さんたち「大」百姓の、どんと地に足のついた生き方はとてもまぶしく映る。山下さんは「TPPがなんだ。おれらは恐くなか。日本の農業がダメになって困るのは都市の住人じゃなかか」と言い、中島さんは「成長経済より循環型経済が大事。成長を追うあまり循環から飛び出したらいかん。後ろ向きに歩け」とおっしゃる。3.11を経た今、唐津の農家を舞台にした高橋正圀さんのユーモアあふれる世界を通じて、自分も含めたこの国の行方をもう一度見つめなおしたい。
福山啓子