暑い、そして熱い! 大谷賢治郎(演出)
暑い!だけではありません。熱いんです。稽古場が熱いんです。斎藤憐さんの戯曲にはたくさんの思いがつまっており、台詞の真意であったり物語の方向性であったり、様々な分析が必要で、日々稽古場では熱い熱い議論を繰り広げています。その結果、我々がこの座組みで観客に伝えたいことも自ずと溢れ出し、その全てを取りこぼすことなく、日々稽古を重ねています。そんな稽古場ですから、稽古がなかなか進まない。ことあるごとに足を止め、検証する。そして座組みとしての共通認識を確認する。
またこの作品と向き合うにあたり、僕も含む座組みの何人かは今回の作品の舞台になる石垣島まで足を運び、人に会い、取材をし、音や空気に触れ、泡盛とも出会いました。取材に協力してくださった方々は皆さん、丁寧にそして真摯に話しをしてくださいました。歴史のこと、文化のこと、音楽のこと、言葉のこと、戦後の復興のこと、自衛隊がまもなく派遣されること、彼らの子どもたちも学校に通ってくるということ、これまで行なってきた平和教育が続けられるかということ、そして三千人以上が戦時中、強制疎開によってマラリアの感染死に追い込まれたこと。彼らの言葉にこの作品創造の真髄を感じ、「頼んだよ」とバトンを渡されたような気がします。
創造過程に於いて難題にぶつかると、俄然燃えるチームにて上演する、今回の作品「豚と真珠湾」。そのチームの姿はこの作品に描かれる自治政府を作ろうとした青年たちの姿とも重なります。自分たちの未来は自分たちの手で作る。その熱い思いを観に来てくださると幸いです。
「キューヤ、アツァ、ソーラ!」(今日も暑いね〜!)
大谷賢治郎(おおたにけんじろう)
演出家。
1972年東京都出身。
サンフランシスコ州立大学芸術学部演劇学科卒。company ma主宰。
児童劇から人形劇、古典から現代劇、
市民劇から国際的コラボレーションなど
様々な形態の舞台芸術を演出する。
2017年から21年、アシテジ国際児童青少年演劇協会
の世界理事として、国際的な児童青少年のための
舞台芸術の発展のために力を注ぐ。
また東京国立博物館の演劇的ガイドツアー、
国内外での演劇ワークショップなど行なう。
現在、桐朋学園芸術短期大学特任准教授、
東京藝術大学非常勤講師、
東京都立芸術総合高等学校特別専門講師を務める。
青年劇場では、小劇場企画「動員挿話/骸骨の舞跳」(2015)で初演出。
以降、「原理日本」(2017)、「宣伝」(2018年)、
「鮮やかな朝」(2021年)で演出。
定例公演では今回が初演出。