文殊さんとの出会い
福山啓子
2019年に初めて京丹後市の「穴文殊さん」に行ってから、
そこの風景が頭から離れなくなりました。
「三人寄れば文殊の知恵」とうたわれ、
尊崇を受ける文殊様が、
参道を残して片側を米軍基地、
反対側を自衛隊基地に、358度囲まれているのです。
なんとかここのことを芝居に出来ないかと通ううちに、
2020年7月、京丹後市初のコロナ感染者がここの米軍基地から出て、
クラスターが発生しました。
2020年を境に「コロナ前」と「コロナ後」と区分けされそうな今の時代。
私たちはこれからどのような社会を目指したらいいのでしょうか。
人口流出に悩む地域で、
莫大なお金をつぎ込んで基地が建設される横には、
無農薬農業できれいな山と海を取り戻そうとする人たちがいました。
さまざまな犠牲を地方に押し付けて栄えてきた都会の人間として、
私自身がしっかりとこの現実と向き合わなければ――
文殊さんの知恵を借りながら。そう思う今日この頃なのです。