臨界幻想2011

ふじたあさや=作・演出





畏(おそ)れを忘れた日本人へ

原発を問い
曖昧な現実を疑え

たかがお湯を沸かすためだけに
どうして核分裂を起こさせる
必要があるのだろうか

青年が死んだ。死因は心筋梗塞。26歳。未来産業とあこがれ、原子力発電所に就職して七年目だった。
周囲の人間はただの病死と納得し、失意の恋人も新しい人生を選び直そうとしていた。その折も折、残された母親のところへ、労働者被曝の調査に訪れた者があった。

「息子さんの死は、原発と関係があるんじゃありませんか」

息子の死の真相を追い求める母によって、知られていなかった事実が次々と浮かび上がる。
そして…。

“近未来”と時を設定して初演されてから30年。
起きてしまった福島原発の事故。
青年劇場とふじたあさや氏が痛恨の思いを込め、
2011年版で、これからを問う!!




歴史と共にしぶとく、変化し続ける私たち

 2012年5月、私たちは、演劇が、時代と共に新しい命を得て生き延びて、力を発揮しうるものだということを、証明した。1981年初演の『臨界幻想』を、3・11以降の現実を踏まえて、改作したのである。
 改作したといっても、原型の『臨界幻想』自体には、ほとんど手を入れてはいない。手を入れたのは、劇中劇の『臨界幻想』を見守る人々のドラマである。
 30年前に警告したにもかかわらず、あのような惨事にいたったことに、私たちは責任があると思った。30年前にあれだけのことがわかっていたのに、どうして原発をやめさせることができなかったのか。そう自らに突き付ける刃が、見守る人々のドラマを作らせた。新たに判明した事実や、進行中の事件が、見守る人々の武器になった。
 結果、30年前のドラマは、今もなお呼吸し続けることになった――はずである。
 再演に向けても、私たちはこの姿勢を保ち続けたい。福島第一原発の事故に終わりがない以上、私たちのドラマにも、終わりは来ない。
 まやかしの「脱原発宣言」を信じ込むほど私たちはお人好しではない。
ふじたあさや
1934年東京生まれ。早稲田大学演劇専修在学中に福田善之と『富士山麓』を合作。放送作家を経て、劇作家・演出家として活躍。
主な戯曲に、『日本の教育1960』『ヒロシマについての涙について』『現代の狂言』(以上劇団三十人会上演)『さんしょう太夫』(前進座・斎田戯曲賞受賞)『サンダカン八番娼館』(文化座)『しのだづま考』(京楽座・芸術祭賞受賞)『ベッカンコおに』(えるむ)など。演出に『フォークオペラ・うたよみざる』など。
青年劇場では『臨界幻想』『闇の中の白い道』『書かれなかった頁』『村井家の人々』をいずれも千田是也演出で上演。



出  演
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冨田祐一

藤木久美子

名川伸子

広戸聡

吉村直

大木章

大嶋恵子

島本真治

浦吉ゆか

北直樹

中川為久朗

清原達之

永田江里

真喜志康壮

矢野貴大

八代名菜子

小泉美果

枯木彩那

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スタッフ

作・演出=ふじたあさや

美術=池田ともゆき
照明=横田元一郎
音楽=川崎絵都夫
音響効果=菊池弘二
映像編集=星野有樹
衣裳=宮岡増枝
演出助手=大谷賢治郎
文芸助手=広戸聡
方言指導=葛西和雄
宣伝美術=八木克人
舞台監督=荒宏哉

製作=福島明夫



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(観客の声)

 めったに演劇など見ない私が新聞記事に触発されたのは3・11以来の日本の現状と未来をどうにかしたいと思ったからにほかなりません。「金じゃなくて命なんだ」というメッセージを深く受けとめ、思考と行動に生かしていこう。(60代男性)

 こんなにも恐ろしいことが、現実に起こっているとは…。そして、そんな現実を知らされない恐怖を、ひしひし感じました。私たちは、あまりにも無知だということ、でもこれからは、自分たちの命は自分たちで守らなければならないということを思い知らされました。(10代女性)



≪全国公演≫

2016年
5月・6月 首都圏演劇鑑賞団体連絡会
     長野県演劇鑑賞団体連絡会議

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