真珠の首飾り
ジェームス三木=作・演出

わずか一週間で草案を作成したGHQ民政局員たちがいた。
ジャズの名曲にのせて描く日本国憲法誕生の舞台裏!


(撮影:蔵原輝人)

 1946年2月4日、東京日比谷のGHQ(連合軍総指令部)の一室に民政局員たちが秘密裏に集められた。招集をかけたのは局長のホイットニ−将軍。日本政府の憲法改正案をスクープ記事で知った連合軍最高司令官マッカーサー元帥は、その保守的な内容ではポツダム宣言の精神が生かされないと失望し、逆にGHQで草案を作成すべし、と民政局に命じたのであった。 ホイットニ−は草案作成のための“3つの原則”を記したマッカーサー・ノートを示し、「締切期限は一週間!」と告げる。 25名の民政局員たちは、22才のベアテ・シロタを含め、20代から50代まで、いずれも弁護士、学者、"日本通"など多士済々のメンバ−たち。作戦命令を受け止めたケーディス大佐(民政局次長)-は、秘密厳守の命令の下、ただちに立法、人権、天皇などの7つの委員会にメンバーを配属する・・。

ジェームス・三木 (作・演出)
第二次大戦中に戦死したグレン・ミラーの音楽は、戦後になって世界中を席捲した。この芝居の主題曲〔真珠の首飾り〕をはじめ〔イン・ザ・ムード〕〔茶色の小瓶〕 〔ムーンライト・セレナーデ〕〔アメリカン・パトロール〕などなど。
 私は新憲法の日本政府案、民間の憲法研究会案、GHQ案など、百家争鳴の時代背景として、グレン・ミラーの音楽がもっともふさわしいと考えた。
 そのグレン・ミラーが妻の誕生日にプレゼントしたのが〔真珠の首飾り〕である。占領軍司令官マッカーサー元帥にも、戦後の日本に新憲法をプレゼントするという意識があったのではないか。たとえそれが、いわゆる押しつけであったとしても。
 真珠の美しい光沢は、アコヤ貝の中で苦悶しつつ絞り出した液が、だんだん重なって生まれるものだ。GHO民政局にしても、他国の憲法をたった一週間でひねりだすには、相当な苦悶があっただろう。その部分の再現を試みたのがこの芝居である。私は日本国憲法を、103粒の真珠になぞらえたつもりだ。
 この芝居を書こうと思ったのは、NHKで『憲法はまだか』というドラマを書いた直後である。松本蒸冶を中心とする日本政府案の成り立ちを描いたからには、それを拒否したGHQ案の制作過程も、しっかり押さえておきたかったのだ。
 出演者がすべてアメリカ人と知って、青年劇場の諸君はさぞ驚いただろう。脚の短さや髪の色もさることながら、シエークスピアとはまた違った立居振舞を、どうこなすかは生易しいことではない。特に軍服の調達には衣裳係が難儀をきわめた。役者と相談しながら方言を取り入れたのは、アメリカという多民族国家を表すためである。
 難解なディスカッションドラマを、どう口あたりよく見て貰えるか、いろいろ工夫はしてみたが、さてどんな結果になるか。

青年劇場の「真珠の首飾り」を観劇したことは、私にとって大変スリリングな体験となりました。何故かといえば、若い時の私と年を取ってからの私の両方が、劇中で主要な役だったから、それに日本の新憲法を観客にとてもわかりやすく説明していたからです。日本の新憲法は憲法のモデルであり、だからこそ、そのメッセージは出来る限り宣伝されるべきであると、50年前、私はそう信じていました。そして今も確信しています。青年劇場はこの舞台で、女性の権利と平和への理解を多くの人々に伝えました。あんなに真剣な舞台に、敢えて取り組んだ青年劇場とジェームス三木さんは称賛に値します。勇気と信念を持つ青年劇場が、この作品を長く公演し続けることを期待します。成功をお祈りしています。
ベアテ・シロタ・ゴ−ドン




初演時の反響
改めて日本の憲法の意義について考えさせる。 −テアトロ誌−
政治家にぜひ見てもらいたい芝居だ。 −演劇界−
憲法の本質に果敢に挑んだ舞台。 −民主文学−
興味深い憲法草案作りの内幕。 −スポニチ−
テンポよく退屈しない。スリリングで引きつけられる。 −スポーツ報知−


出  演
(写真にポインターを合わせると役名が表示されます)

西沢由郎

後藤陽吉

千賀拓夫

上甲まち子

青木力弥

藤井美恵子

冨田祐一

葛西和雄

細渕文雄

中谷源

吉村直

佐藤尚子

湯本弘美

杉本光弘

島本真治

大木章

奥原義之

松永亜規子

榎本葉月

船津基

寺田吏宏

高山康宏

大山秋
スタッフ
美術 園良昭
照明 横田元一郎
音楽 山下六合雄
音響効果 石井隆
舞台監督 荒宏哉
製作 福島明夫
ツアースタッフ
舞台監督 白石康之
舞台監督助手 青木幹友
音響効果 前田有希子
照明 前政人
横田元一郎

(ライティングユニオン)
大河原修二
( 〃 )
井上健
( 〃 )
根橋生江
( 〃 )
川村孝志
( 〃 )
古沢久美子
(フリー)
公演班だより


2005年全国公演
6月〜7月九州・四国・近畿・東海・関東
詳しい日程はこちら


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※詳細・お問合せ等は製作部03(3352)6922(平日・土10:00〜18:00)
またはinfo@seinengekijo.co.jpまで