「菜の花」だより     広尾博(俳優)

 「菜の花らぷそでぃ」は7月・8月上旬の東北演劇鑑賞団体の公演を終えました。どこの鑑賞会でもとても熱いもてなしを受けています。「食と農」への関心は生きる上での基本…ということをあらためて実感しています。まずは舞台装置、多くの会員さんの世代にとって、あの農家のセットは非常に郷愁を誘い、幕が開いた時点で舞台にひきこまれるようです。蛍が舞うシーンでは、ざわめきがおこります。まさに日本は瑞穂の国なんだと思います。

 東北の最終日、秋田でのカーテンコールで一人の年配の女性が拍手と投げキッスで我々に声援を送ってくれました。それに合わせて客席からも大きな拍手。するとその女性は、小竹(伊津子)さんと握手しながら「必ず直ってみせます。皆さんに元気をもらいました」と言われたそうです。…おそらくご病気なのでしょう。芝居をやってて良かったと思う瞬間です。いろんな事を感じ取ってくれる作品なんですね。

 客演のアンシア・フェインさんは、鑑賞会の会員さんが、搬入・搬出のお手伝いをしたり、お通し(さし入れ)を持ってきて下さったり、交流会を開いてくださったりするのを見て、鑑賞会と劇団が一緒になって舞台をつくってる事に驚き、感動しています。そして反対に、搬入した後、手伝ってくださった会員さんに彼女がお茶を出して回ると驚かれるようです。慣れない日本での旅公演ですが、勉強熱心なアンシアは頑張っています。


初日の会津にて。迎えてくださった会員の方々。

 現在は九州の鑑賞会を巡演中。九州全体は会員減で苦戦していますが、「菜の花らぷそでぃ」を迎えるにあたって奮闘してくれています。初日を迎えた北九州市民劇場は久々に会員を増やして迎えてくださり、「農業は農家だけの問題ではない。この作品はたくさんのものを残してくれた。自分自身が舞台から新鮮な空気をもらって元気になった」というメッセージを九州各地へ伝えてくれました。その後下関・大分からも会員増と聞き、本当に嬉しい限りです。今が旬の舞台。これから出会うお客様と共に舞台を創ることを楽しみに、公演班もいっそう新鮮に力強く活動してゆきます。

 最後に「5000万円募金」に御協力していただいた各鑑賞会の皆様に心から感謝します。