あの夏の絵

福山啓子=作・演出


  こんなにも知らなかった
  ということを
  初めて知った


初演の感想 日程

>> 演劇鑑賞教室について考える <<
※学校での演劇鑑賞教室について劇団機関紙上で連載していたものをWeb上にアップしました。



被爆から70年。
記憶を伝え残すために語り始めた被爆者と、
それを受けとめ、絵に表現することに挑んだ高校生たちの
2015年夏の物語。


「 あ の 夏 」 を 描 く 夏

 広島市立基町高校創造表現科の生徒による「原爆の絵」の取組みを知ったのは2014年の夏でした。高校生が描いたその絵は、被爆者が描いた絵か、ととっさに思うほど迫力に満ちた「地獄絵図」でした。
 広島平和記念資料館の取組みによるこの絵は、被爆証言をする方が証言活動の中で使います。見たことも、聞いたこともない、資料もない、極限状態の中にある人々の姿を描くために、高校生たちは半年かけて繰り返し証言者の話を聞き、現地に足を運び、ネットから資料をさがし、描いて証言者に見てもらっては描きなおすことを繰り返して仕上げていきます。その過程で、証言者の埋もれていた記憶が呼び覚まされ、よりリアルな絵に近づいていき、証言者が「わたしの絵」と呼ぶような迫力のある絵ができあがっていくのでした。
 「話すことが苦手なんで、絵を描いて証言者の方の役にたつことができればと思って」と語る高校生たち。残酷なシーンも「怖いより、描かなくちゃという思いが先に立った」「証言者の手になって描く、という感じ」と、証言者に寄り添って絵を描いていく。彼らを動かしているのは、想像を超える被爆体験のすさまじさであり、その後の被爆者の人生そのものでした。私は高校生たちの真摯な姿勢にうたれ、この取り組みをぜひ多くの人に知ってもらいたい、と思うようになりました。
 彼らを見守る美術の先生は、「絵を描く過程で生徒が自立していく。自ら質問し、行動しなければ描けない絵だから。そして、見えるものの背後にあるものを感じながら絵を描くようになっていく」とおっしゃっていました。「話すのは苦手」と言っていた高校生は、絵の完成披露会では、絵を描く上での苦労やその中で得たものを自分自身の言葉で語ることができるようになっていました。証言者は「この子には確かに伝わった」という手ごたえを感じていらっしゃるようでした。
「戦争の記憶の継承」という、私達に課せられた大きな課題の、ひとつの答えを私はそこに見たように思うのです。

  福 山 啓 子
(ふくやまけいこ)
東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1980年入団。文芸演出部所属。
2006年初演の「博士の愛した数式」で脚本・演出を担当、児童福祉文化賞(厚生労働大臣賞)を受賞。その後、「野球部員、舞台に立つ!」で脚本・演出、「田畑家の行方」で演出、「梅子とよっちゃん」で脚本を担当。


 広島平和記念資料館の依頼で「次世代と描く原爆の絵」の制作に携わって今年で10年目を迎えます。これまでに描いた原爆の絵は100点を超え、10年目の今年も18点の制作に取り掛かったところです。
 最初に原爆の絵の依頼を受けたとき、「ぜひ本校の生徒に取り組ませたい」と同時に、「途中で生徒がつぶれてしまうのではないか」という思いが交錯しました。恐る恐る生徒に呼びかけてみたところ多くの生徒が手を上げてくれました。事前に取り組むにあたっての心構えや覚悟について何度か話をしましたが、実際始まってしまうと教師たちの心配はあまり必要でないことが分かりました。生徒たちは積極的に被爆証言者の方々と関わり、深く考え思いを寄せながら、全く観たことのない世界を創造していきました。あくまで被爆の惨状を伝える証言活動に使用する絵画なので、なるべく正確に描写することが求められましたが、数少ない当時の写真や資料だけではなかなか大変な仕事でした。生徒たちは証言者の方から繰り返し話を聞きながら制作を進めていましたが、そのこと自体が生徒の学びの場になり相手の気持ちに寄り添うという心を育んでいったのではないかと思います。制作者はもちろんですが、実際に制作していない生徒たちも、モデルとして協力したり、その活動を間近で見る事で大いに学んだのではないかと思います。
 この基町高校での取り組みを元に劇を創って頂きました、青年劇場の福山啓子さんをはじめスタッフの皆様に篤くお礼申し上げます。平和への願いが少しでも広がっていくことを祈念しております。

  広島市立基町高等学校 美術科教諭
  橋 本 一 貫

(はしもとかずぬき)
1959年広島市生まれ。広島市立基町高校に入学し、平岡秀樹先生に油絵を学ぶ。1980年第66回光風会展初入選。1982年大阪芸大卒業。いしがき会入会、岡崎勇次氏に師事する。現在、日展会友、光風会会員、日本美術家連盟会員、いしがき会、桐美会。


広島市にある私立海陵学園高等部。
美術部員のメグミは祖父母が入市被爆をしている被爆三世。顧問の岡田が持ち込んだ「被爆証言を聞いて絵に描く」取り組みに、迷いながらも参加することを決める。
東京から引っ越してきた同じ美術部員のナナは友達よりも絵を描くことが大好きで、漫研と兼部しているアツトが気に入らない。
岡田の提案で被爆証言は三人で聞くことになり、証言者・白井の話を聞いて心を突き動かされる三人だが、ある日ナナが学校に来なくなって…。


出  演
顔写真にポインターを合わせると役名が、 俳優名をクリックするとプロフィールが表示されます


青木力弥

藤井美恵子

秋山亜紀子

林田悠佑

傍島ひとみ

前田みどり
他の俳優プロフィールは →  こちら

ス タ ッ フ

美術=石井強司/照明=河ア浩/音楽=堀沢広幸/音響効果=石井隆
衣裳=宮岡増枝/宣伝美術=増田絵里(+Design Port)/
方言指導=蒔田祐子/演出助手=清原達之/舞台監督=松橋秀幸
製作=広瀬公乃/製作助手=白木匡子



<2017年公演予定>
10月〜12月 広島県・関東


演劇鑑賞教室について考える
※学校での演劇鑑賞教室について劇団機関紙上で連載していたものを
Web上にアップしました。


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