山下惣一さんによる食・農への直言、箴言
創森社代表 相場博也
食・農の分野の出版を手がけていると、よく「農業の問題は間口が広く奥が深くてわかりにくい」との声を耳にします。それを農業に従事するかたわら文筆活動を続けてきた山下惣一さん(佐賀県唐津市)は、畔道からの視点で歯に衣着せず痛快に、ときには辛辣に解き明かしてくれたのです。
山下さんには30歳代に著した小説からエッセイ、往復書簡・対談集、ノンフィクション(ルポルタージュ、紀行)まで58冊の著作(監修、編纂を含む)があります。このうち、著者としての山下さんに長らく伴走するかたちで手がけてきた作品数は3分の1ほど。生前ラストの書籍として受け持ったのが、このたびの青年劇場公演「老いらくの恋」の原作『農の明日へ』です。本書でも至るところに明解な直言、箴言が放たれており、さらに越し方・処し方を披瀝し、行く末を照らしています。
これまで精力的な著述活動で後世に多くの生かすべき教訓を残してくれた山下さんの功績に、改めて謝意を表するしだいです。山下さんの著作にインスピレーションを得た脚本家の高橋正圀さんの農シリーズも、「遺産らぷそでぃ」以来5作品目の新作となれば、期待しないわけにはいきません。
高橋 正圀(たかはし まさくに)
山形県米沢市出身。山田洋次氏に師事。NHK「まんさくの花」「釣りバカ日誌」など映画・テレビの脚本を数多く執筆し、高い評価を得ている。
【青年劇場での上演作品】
「遺産らぷそでぃ」「キッスだけでいいわ」「愛が聞こえます」「銀色の狂騒曲」「菜の花らぷそでぃ」「キジムナー・キジムナー」「ナース・コール」「シャッター通り商店街」「結の風らぷそでぃ」「青ひげ先生の聴診器」「田畑家の行方」「キネマの神様」
西川 信廣(にしかわ のぶひろ)
1949年東京生まれ。劇団文学座所属。
1986年から1年間文化庁の在外研修員として渡英。 ブリストル・オールドヴィック、ロイヤル・ナショナル・シアターで演出助手などを務めながら研鑚。 帰国後、所属の文学座を中心に、商業演劇、各種プロデュース公演で幅広く活躍。
近年は、地域演劇や演劇教育にも力を入れている。 紀伊國屋演劇賞、芸術選奨文部大臣新人賞、読売演劇大賞など数多く受賞。
現在、新国立劇場演劇研修所副所長。東京藝術大学非常勤講師。(公社)日本劇団協議会会長。日本演出者協会理事。